腸内細菌叢は社会の縮図

腸内には、善玉菌・悪玉菌・日和見菌という、役割の異なる菌たちが共存しています。

たとえば、「善玉菌＝警察官」「悪玉菌＝泥棒」「日和見菌＝一般市民」と例えるとわかりやすいかもしれません。
大切なのは、どれかが多すぎても、少なすぎてもバランスが崩れるということ。

腸内環境のカギは、三者のバランスにあります。

腸内環境の安定は、この微妙な力関係の均衡によって成り立っています。

善玉菌偏重が引き起こすリスク

発酵食品やプロバイオティクス製品が豊富な日本では、善玉菌を積極的に摂取することが健康維持に直結するという認識が広く浸透しています。
しかし、自然界において陰陽のバランスが不可欠であるように、腸内細菌叢もまた陰陽の調和が必要不可欠です。
悪玉菌や日和見菌も、生体防御機能の適切な発達や、免疫系の成熟に重要な役割を担っています。

腸脳相関（Gut-Brain Axis）の重要性

腸は単なる消化器官ではなく、「第二の脳」とも呼ばれる高次な情報伝達ネットワークを形成しています。

腸脳相関（Gut-Brain Axis）は、腸内環境が神経系や心理状態にまで影響を及ぼすことを示しています。
自然界には、脳だけで存在する生物はおらず、腸だけで生存する生物は存在することからも、腸が生命維持においていかに重要な役割を果たしているかが理解できます。

生きた菌の過剰摂取に潜むリスクと「育菌」の概念

近年、「生きて腸に届く乳酸菌」をうたった製品が注目を集めていますが、生きた菌を大量に腸内に導入することは、必ずしも有益とは限りません。
本来、外部から摂取された菌は、胃酸などの生体防御機構により選別・淘汰されるプロセスを経ることで、腸内に適切な形で定着します。
このプロセスを無視して大量の生菌を送り込めば、腸内細菌叢のバランスを乱し、長期的には免疫の過剰反応や炎症のリスクを高める可能性も指摘されています。

そのため、近年注目されているのが、腸内で自然に善玉菌・悪玉菌・日和見菌を育てる「育菌」の考え方です。
外から一方的に菌を追加するのではなく、腸内の環境を整え、自らの体内で菌を育てることが真の健康維持に繋がります。

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